クロロホルム-dとベンゼン-d6の残留プロトンのピーク幅 【オタワ大NMRブログ 和訳記事】

私はよく学生に以下の質問をします: ベンゼン-d6の残留プロトンピークがクロロホルム-dのものよりブロードになる理由は何でしょう?驚くべきことに、答えられる学生は少ないです。以下の図は、同じスケールでのクロロホルム-dとベンゼン-d6のシグナルを示しています。答えは下に記します。

99.6% D benzene-d6のプロトンシグナルはC6D5Hによるものです。ベンゼン環上唯一のこのプロトンは、ベンゼン環の他の重水素とカップリングします。スペクトルをよく見ると、部分的に分離したカップリングがシグナルの凸凹として観察され、明らかにローレンツ型でないことがわかります(訳注: シングレットのシグナルは理想的にはローレンツ関数の形になります)。メタ/パラ位の重水素とのカップリングが無視できるとすれば、オルト位の重水素とのカップリングによって1:2:3:2:1のクインテットになると考えられます。

一方、99.8% Dクロロホルム-dのシグナルはCHCl3(普通のクロホ)に由来するものです。この場合H-Dカップリングはないので、結果としてシグナルはより鋭くなります。


Original title: Width of Residual Proton Resonances for Chloroform-d and Benzene-d6
8:22 AM, FRIDAY, SEPTEMBER 14, 2007.

References:
Glenn Facey, University of Ottawa NMR Facility Blog: Width of Residual Proton Resonances for Chloroform-d and Benzene-d6, http://u-of-o-nmr-facility.blogspot.com/2007/09/width-of-residual-proton-resonances-for.html (accessed 2023-06-13).

この記事はGlenn Facey氏の許諾のもとUniversity of Ottawa NMR Facility Blogの記事を和訳しているものです。

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