2022年1月の面白い論文

2022年1月に配信した面白い論文を紹介します。

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1/1~1/7の論文

CW0001

Korde, A.; Min, B.; Kapaca, E.; Knio, O.; Nezam, I.; Wang, Z.; Leisen, J.; Yin, X.; Zhang, X.; Sholl, D. S.; Zou, X.; Willhammar, T.; Jones, C. W.; Nair, S. Single-Walled Zeolitic Nanotubes. Science 2022, 375 (6576), 62–66.
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abg3793

中心にビフェニル骨格を持つ構造規定剤を使ってゼオライトを作ることで、単層ゼオライトナノチューブを合成した論文。電顕でチューブ構造を見ている。単層ゼオライトナノシート(Nature 2009, 461, 246–249)は結構前に達成されていましたが、それがチューブになったということで年始に驚きました。合成過程では、まずチューブ状の構造ができてからMFIとBEAが混ざった感じのが結晶化するみたいです。今回はチューブ状のミセルを用いてゼオライトを合成しているので、水熱合成条件下でも安定な超分子構造(難しい)を作れれば好きな形のゼオライトができるかもしれません。

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Zhu, C.; Kleimeier, N. F.; Turner, A. M.; Singh, S. K.; Fortenberry, R. C.; Kaiser, R. I. Synthesis of Methanediol [CH2(OH)2]: The Simplest Geminal Diol. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.2022, 119 (1). https://doi.org/10.1073/pnas.2111938119.
https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.2111938119

メタンジオール(CH2(OH)2)はホルムアルデヒドの水和によって水溶液中に生成しますが、遊離した状態のメタンジオールは脱水しやすいため合成・観測が困難でした。この研究では、メタノール/O2の氷に電子を照射しながら高真空下で昇温することで、メタンジオールの合成・観測に成功しています。キャラクタリゼーションはIRとMSで行っていて、特にMSは光を使ったイオン化を使っているため選択的にイオン化することができています。

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Dorca, Y.; Naranjo, C.; Ghosh, G.; Soberats, B.; Calbo, J.; Ortí, E.; Fernández, G.; Sánchez, L. Supramolecular Polymerization of Electronically Complementary Linear Motifs: Anti-Cooperativity by Attenuated Growth. Chem. Sci. 2021, 13 (1), 81–89.
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2022/SC/D1SC04883J

最近のπ積層系超分子ポリマーは核形成-伸長モデル (cooperative model, 核形成は不利だがそこからの伸長は有利) で成長するものが多いですが、この研究で報告している超分子ポリマーは逆で、伸びるにつれてだんだんエネルギー的に不利になっていくものになっています。仕組みは単純で、伸長するごとにπ共役系が歪んでいくことで伸びづらくなっていきます。これにより、短い超分子ポリマーのみが得られることをAFMで実証しています。また、二種類のモノマーを混合することによるコポリマーの合成にも成功しています。

CW0004

Wu, X.; Huang, J.-W.; Su, B.-K.; Wang, S.; Yuan, L.; Zheng, W.-Q.; Zhang, H.; Zheng, Y.-X.; Zhu, W.; Chou, P.-T. Fabrication of Circularly Polarized MR-TADF Emitters with Asymmetrical Peripheral-Lock Enhancing Helical B/N-Doped Nanographenes. Adv. Mater. 2021, e2105080.
http://dx.doi.org/10.1002/adma.202105080

MR-TADFでCPLが出る分子を作った論文。硫黄を導入することでラセミ化の活性化障壁を上げているのがミソ。半値幅は~50 nm程度だが、gELが10–3オーダーのCPLが出ている。

CW0005

Mondal, D.; Ahmad, M.; Panwaria, P.; Upadhyay, A.; Talukdar, P. Anion Recognition through Multivalent C-H Hydrogen Bonds: Anion-Induced Foldamer Formation and Transport across Phospholipid Membranes. J. Org. Chem. 2021. https://doi.org/10.1021/acs.joc.1c01408.
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.joc.1c01408

アニオンによって折り畳まれるフォルダマーについての報告です。トリアゾールとシアノスチルベン骨格を使ってアニオンとの相互作用を達成しています。なお、似た骨格のフォルダマーは既に報告されています(Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 3740–3743)。今回のフォルダマーはSO42–と強く相互作用し、これがどうやら珍しいようです。また、膜に組み込んでイオン輸送特性を見ており、この環境ではClが最も輸送しやすくなっています。

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